諸外国が日本を高く評価するものの一つが「長寿国日本」であり、その基となってきたのが「国民皆保険制度」であります。病気やけがという不幸・不運に遭遇した際に、保険証1枚で、いつでも、どこでも、安心して医療を受けることができるのは日本の優れた「公的医療保険制度」が大きく貢献しているところであります。この公的医療保険制度は、国民の負担する保険料及び税を財源として運営されている共助の制度であることから、公平公正が得られることが前提であり、国民の共通の財産として制度を守り、維持していく必要があります。
このような中で、審査支払機関の役割は、医療に係る「診療報酬の適正な審査と迅速な支払」を確実に担保するという公的医療保険制度の屋台骨であり、国民皆保険を支える社会インフラであります。この診療報酬の審査は、保険医療機関等の診療行為が、国が定める保険診療ルールに適合しているか等をチェックするものであり、公的医療保険制度の適正な実施運営を担保するうえで、必要不可欠な機能を担っているところであります。
令和元年5月に社会保険診療報酬支払基金法の一部改正が行われ、各都道府県支部が廃止され、支部の有する権限は本部に集約されることになりました。令和4年10月に支払基金の組織は、電子レセプトの審査事務を行う全国14の「審査事務センター・分室」と各都道府県審査委員会の補助業務を担う「審査委員会事務局」とに再編され、ICTを活用した審査事務の効率化・高度化と審査結果の不合理な差異解消の取組を円滑に実施する新しい組織体制へと刷新されました。
一方で、データヘルス事業についても、その基盤となるオンライン資格確認が令和5年4月に原則義務化、令和6年秋の保険証の廃止予定を見据え、令和5年1月に電子処方箋管理サービスの運用が始められています。
また、医療DXについては、診療報酬の共通算定モジュールの開発、電子カルテ情報交換サービスの開発、健康スコアリングレポートやデータヘルスポータルサイト、更にはNDBオンサイトセンターの設置などデータヘルスの基盤を担う専門機関としての取り組みと新たな付加価値を生み出す事業の展開が期待されるところであります。
これらの審査支払機関の機能強化・組織改革等については、今後の公的医療保険制度の適正な実施・運営に少なからず影響を及ぼすことから、当研究協会としても、この成り行きを注視しながら、引き続き、医療保険における診療報酬の審査支払業務の効率化・システム化に資するための調査研究事業、保険診療ルールの啓発普及の一環としての出版事業を行い、これをもって公的医療保険制度の円滑な運営に寄与することとしております。
一般財団法人 医療保険業務研究協会